それから暫くして、食事を終えた二人が店を出たのを確認してから急いで会計を済まし追いかける。
最初のウェイターが意味あり気な瞳でまた来てくれと言うものだから、少し背筋が震えた。


(亜子たちもう今日は解散なんだろ?)


帰路を進まない亜子に少しの疑問を抱きつつも後をつけて行くと辿り着いたのは映画館。


楽しそうに笑って中へと入って行く二人にまたもや胸がもやもやする。
釣られるようにヨウも映画館へと入り、二人から少し離れた後ろの方の席に着いた。


いかにも若い女性やカップル向けの恋愛映画がようやく終わる頃にはグッタリとしていた。

少しだけ照明が明るくなって、ぞろぞろと客が席を立って出て行く中で、なかなか席を立とうとしない二人。

何やってんだよ、と思っていたら急に、男の方が亜子へと近づきキスをした。
思わぬ出来事に愕然としている中、まあるく目を開いてビックリしている亜子が視界に映る。


(もうちょっと、嫌そうな顔してもいいんじゃね?)


キャップを深く被り直しながら、映画館を出た。


先ほどまで天気だった空は、どんより曇った雲に
覆われていまにも雨が振り出しそうだった。