骨抜き状態になったウェイターを上手く利用して、ちょうど亜子たちの姿が見える席へと着くことに成功した。
レンガの薄い壁でところどころ仕切られているので、おそらくあっちからは見える心配もないであろうと思う。
バレる心配も少ないが、若干個室化する店内の様子に胸が嫌な音を立てる。
何か楽しそうに喋っているのは見て取れるが、イマイチ内容までは拾うことが出来ない。
「っぁ!!!!」
ガタッ
思わず立ち上がり大きく上げてしまいそうになった声を必死で堪え、しゃがみ込む。
恐らくは一口交換をしたのだろうが、あいつのフォークで巻き取られたパスタをあいつが亜子の小さな口に運び、素直に美味しそうな顔をして食べる亜子を見てメラメラっと嫉妬心が沸いた。
席につき直してまた様子を見ると、なんと亜子が逆にあいつの口にミートスパを運んでいる!!
ガックリ肩を落とし、呆然と二人を見つめることしか出来ない。
(俺だってまだあんなことしてもらったことないのに!!)
本当に見ていれば仲の良いカップルのように思えた。
それが悔しくて、切なくて堪らない。やはり意地でも引っ張って行かせなければ良かった。
(そ、そうだ携帯…!!)
適当に風邪で辛いとか言ってすぐに家に帰って来てもらおう。
恐らくそれなら亜子も急いでここを出てくれると、思いたい。
電話を発信しながらチラリと向こうの席を見ると、相変わらず楽しそうに話をする二人の姿。
携帯に気づいてる様子が一切しない!!!
悔しい!!!と舌打ちしながら携帯を切った。
