次の朝、目を覚ますとクロの姿は見当たらなかった。
その代わりに、…いや代わりなんてものじゃないけれど、隣に知らない男がいた。
(な、なに!?てゆうか誰!!!?)
こんな男、部屋に入れた記憶ましてや同じベッドに上げた記憶はもちろんない。
変質者?いやそれどころじゃないのは分かってるけど、なぜだか全く知らない人物には思えなかったのだ。
どこかであったような…という感情とともに、朝陽に照らされた寝顔に心が釘付けになっていた。
細く高い鼻に形の整った唇。フェイスラインはシュッとしてて、綺麗な頬が朝陽を集めている。
それはまるで…王子様のような。黒髪の、絵本にでも出て来そうな王子様。
じっと魅入っていると、ぱちりと目が開いた。
(わ、やっぱりイケメン…)
どうしたものかとアタフタしたが、よくよく考えればここは私の家なのだ。
私が動じる必要なんてない!
「あの…!ちょ、ちょっと!何また寝ようとしてるんですか!」
「んー…亜子?寒いからもっとこっち…」
そう言って布団ごとギュッと引っ張り込まれた。
完全に寝ぼけてるこの人。私をカイロだと思ってるの!?なんで私がこんなドキドキしなきゃなんないの!??
そんなことを考えてパニックに陥っていると、また規則的な寝息が聞こえ始めた。
いや、え、てゆうかちょっと待って?
さっき亜子って呼んだ?ってことはやっぱり私の知り合い…?
