迷うこと無くドアの方向に歩き出し、本当にこのまま帰るつもりらしいヨウに何故だか涙が出そうになる。

止めなくちゃ、止めなくちゃ、と思うばかりで言葉にすることが出来ない。
ヨウはいつだって、言葉と体で思いを伝えてくれるのに。


「……っっヨウ!!!」


ぎゅっと背中に抱きついて、待って行かないでと駄々を捏ねる。
言葉にしない私はずるい。




「亜子…もういいから…」



だらりと下がったままの腕に、見せてくれない顔に、心がシクシクと傷む。



ぐいっとヨウの正面に回り込んで唇を重ねようと思った。
だけど届かないヨウにまた涙が出そうになる。




「…っよ、う……キス、したぃよっ…!」




「はぁーーーーーーー。
もう、何でそんな泣きそうな顔してんの。泣きたいのは俺の方だったのに!
でも、分かったでしょ?
二人が協力しないとキスだって出来ないんだよ」




そう言って優しく微笑んだヨウは腰を少し曲げて、私の頬にキスを落とす。





「ヨウ…。そこじゃ、なくって…」



分かってるくせに。
口角を上げたまま至近距離で私を見つめる。
その瞳に自分が映っているのを見て、なんだかホッとしたから不思議だ。



「ヨウ…一緒に、キスしよ?」



そう言うと、ヨウの顔が近づいて噛み付く様にキスを始めた。