そう言うと、少しびっくりしたように亜子が固まる。
「ち、違うょっ!そんなんじゃなくて…この前ヨウが投げ倒しちゃったでしょ?
その時のお詫びも兼ねて、断れなくて…。
すぐ、ご飯食べ終わるよう頑張るから…っ」
どんどん曇って行く表情に、やっぱり可愛すぎるのも反則だと思った。
それはその時の話として何とかすることにしよう。
それよりも今は亜子を可愛がりたくてしょうがなくなってきた。
「分かったから、泣かないで?」
頬に手を当てると濡れた瞳がこちらを向く。
このアングル、あいつにはぜってー見せたくない!
そんなことを俺が考えているとは露知らず、きゅっと俺に抱きついてきた亜子をその場で押し倒したくなった。
「その代わり、家に着いたら俺のお願い、聞いてくれる?」
少し間が空いたけど、俺の腕の中でこくりと頷くのが分かった。
「変なことじゃ、ないよね?」
部屋を目前にして不安そうな顔で尋ねてきた。
本当に、無自覚も怖いな。
「全然?」
軽い口調でそう言ってみせると、まだ少し納得はいって無さそうだったが、鍵を回した。
