「ね?亜子、何で俺に彼女がいるなんて思ったの?
誰かになんか言われた?…まさか、あの男とか!?」
あの男というのは、いうまでもなく居酒屋で一件あった奴だ。
しかしどうやらそれは違ったらしく亜子は首を振ってみせた。
そして、言いづらそうに口を開いた。
「…っわたし、見たよ?ヨウが可愛い女の子とデートしてるの。
私が風邪ひいた時だって…その…シオちゃんって子のとこ…言っちゃったじゃない…」
「シオちゃん?…って、紫音のことか!?」
「シオ…ン?」
キョトンと涙目で見つめてくる亜子は、とても不安そうな顔してる。
こんなことで不安にさせて、俺って本当に馬鹿だと反省した。
「…紫音は俺の従妹なんだよ。
もしかして先週会ってたの見た?なんか家でいろいろあったみたいでさ…要は家出してきちゃったんだよ。
その面倒見役に俺が当てられちゃって、この一週間紫音に付き合わされてたんだ」
「ほん…とに…っ?」
それでもまだ今日一度も見せてくれてない笑顔を作らない亜子を優しく抱きしめた。
「ほんとにほんと。会いに行けなくて本当にごめん。
携帯はこの前紫音と出かけた時に買って、亜子の連絡先聞こうと思って家に行ったんだけど亜子がそれどころじゃなかったからさ。
亜子、俺は亜子が一番好きだよ。亜子だけが好きだよ」
そう言って優しくおでこにキスを落とした。
