甘い果実





ヨウと女の子が手を繋いで歩いている。



ヨウ、待って。行かないで。助けて。


私の足元は断崖絶壁で、足が竦んで動けない。


頑張って叫んでいるのに二人には全く聞こえてないみたいで、どんどん遠ざかって行ってしまう。


やだ、行っちゃ、やだ…!



「ヒュー…ヒュー…ゴホッ……」



はっと目を覚ますと、ぐっしょりと汗をかいていた。
なんだ夢か…とホッとすると同時におでこが冷んやりとすることに気づく。

(濡れタオル…?っていうか…)



違和感を感じて足元の方を見ると、いつ入って来たのかヨウが丸くなって寝ていた。


「コホッ…ョゥ…ョゥ……」


力の入らない手で必死にヨウを揺すった。



「んーー………もぅちょっと……




…ん?………っあ!…亜子!?起きた!??
体、大丈夫!?」


慌てて起き上がったヨウは、心配した顔で私のほっぺたを両手で挟み込んだ。



「風邪…ひいたみたぃ…」


「ばかっ!んなこと見りゃ分かるよ!
大丈夫?辛い?病院行く?」



矢継ぎ早に出される質問に頭がついていかない。


「く、すりは、ぁるから…それ飲むから大丈夫だょ」



体を起こしているのさえも気怠くて、また横になった。