何となくで誤魔化して大学を後にした。
今度飲み会にヨウを連れて来るという約束を承諾してしまったが、仕方あるまい。
でなきゃ、本当に帰らせてはもらえなかった。

改めて知るヨウの格好良さ。私なんかで釣り合うものじゃないなと、一つため息を落とした。



「っくちゅん」


ずっと鼻水を啜る。
何だかあの日以来本当に風邪っぽい。
今日は特にひどい気がするし…早く帰って寝よう。


「シオー!!」


なんだか聞き覚えのある声がして、車道を挟んだ向かい側の通路を見る。


(あれ、ヨウだ。)


最近出会うといい気がしてなかったので、さっとしゃがんで植込みから覗いた。


聞こえたのは大声を上げた最初の一声だけで、あとは何を言っているのか分からなかった。

それよりも私の目をひいたのは、ヨウの隣にいた女の子。
ふわふわの長くて茶色い髪に上品だけどすごい可愛いワンピースで身を纏っている。
背も小さくて、見た感じ私より若そう。
日傘をさしていて、本当にお人形さんみたいな子だった。

にこっと笑う顔には、世の男性を魅了する力があるなと見ていて感じた。

その笑顔が向かう先にはヨウがいて、ヨウも同じように楽しそうに笑っていた。




…なんか、胸が痛い。
熱出て来たのかも。早く帰んなきゃ。


二人が角を曲がって行ったのを確認して立ち上がった。

あー…フラフラする。


カバンを抱えて、一人家路を急いだ。