お酒というものは本当に怖いものである。
なぜかって、あれは人を変えてしまうのだ。

先日の一件はレッドカード続出の醜態を晒してしまった最悪の事態である。
佐土先輩にはメールで謝ったし、ヨウにはしつこいほどに怒られた。
まぁ嘘をついた私も悪いし仕方ないかと割り切ることにした。
帰り道の一件は正直朧げながらに覚えている。
どうせなら忘れていたかった、と思ったので、ヨウには覚えていないふりをして誤魔化した。

問題はそれだけではなかったが、意外な形で現れた。



「ねぇねぇ!!!あのイケメンだれなのぉ!?もしかして亜子ちゃんのカレシ!?」

「あの後どうなったの!?もしかして三人で修羅場とか!!?!」


キャーキャーと喚き質問し倒すのは美咲たちあの場に居合わせた女子メンバーだった。


「ほんっとかっこよかったよね!!あの後その話で持ちきりだったんだからっ」


私が話さずとも熱を上げていく空気に、こっそりこのまま逃げ出そうかと思ったがそうはいかなかった。



「亜子ちゃん?どこいくつもり?」


ニコッと笑った美咲に呼び止められる。


「あは…は…」



「それで?あの人はだれなの?」


「ヨウは…彼氏なんかじゃないよ?」



本当のところ、どうなのか私が知りたいところだ。
元黒猫のヨウに迫られてはいるのだろうが、じゃあいきなり恋人になりましょうってそんな話でもないと思う。
それに私はヨウのこと好きだけど、恋愛感情なのかどうなのかはっきり分からないのだ。