「亜子、帰ろっか?」


「…亜子ねぇ、疲れちゃったから、もうちょっとヨウちゃんとこうしてるー」



そんなこと言われて無理矢理連れて帰ることが出来るか?
少なくとも俺には無理。何か今までになく良い雰囲気な気もするし。
でも亜子の格好は問題だ。俺的な気持ちがどうこうはとりあえず置いておいて、本当に風邪ひきそうだ。


「分かった。けど、これだけは頼むから着て?」


ジャケットを差し出すと、やはり少し悩む素振りを見せる。
少しの間困った顔をしていた亜子が、急にぱぁっと明るい表情になった。



「一緒に入ろっか!そしたら亜子もヨウちゃんも寒くないね!!」


ね!と、これこそ得策だと押し入る亜子に、どうやってそれがいかにいけないことなのかを教えようか考えていると、ジャケットを広げた亜子が俺にぐっとひっついてきた。


「ちょっ…」

「んーーー、入んないねぇ?」


「当たり前だバカ。それよりもうちょっと…」


「でもヨウちゃんとくっついてるから温かいね?ね?」


もうちょっと離れて、と言うつもりだったのに、何今日のこれ。
今日の俺、運勢一位?それとも最下位か?


ぎゅーっと声つきでくっついてくる亜子になす術がない。
本当にばか亜子。


「あーこ」


「んーー?」



間伸びした返事に、もちろん忘れてはいない今日の怒りをどうにか発散せねばと方向転換した。