「大丈夫?ちょっと飲み過ぎじゃない?」


「久々だからぁいーのぉー。ほらぁー、由梨も
せんぱいももっと飲んでくらさいよぉー?」


月もすっかり空に上がった頃、にこっと可愛らしく笑いながら手元に空のジョッキを並べた亜子が言う。


「こらっ!この子ったら全く…。佐土先輩も苦笑いしてるでしょ!」


「あっ、返してぇー!まだそれ途中なのぉっ!」


喚き始める亜子を一瞥し、通りかかった店員にまだ半分ほど残っているカシスソーダを無視して下げさせる由梨。


「由梨のいじわるぅー!!」


「はいはい亜子はお水ね。佐土先輩すいません、亜子ってば酔うと扱い面倒になるの言い忘れてて」


「ううん、面白いから大丈夫。にしても亜子ちゃんってば案外積極的だよね〜、俺としては嬉しい限りだけど」


「もぉ〜二人で何話してるのぉ?亜子も入れてっ!」


「ちょっ…亜子っ!んもぅ!肩紐ずり落ちてる!」


ぼけーっと視点が合っていない亜子の服装を整えた由梨は溜息をつく。
今度からはちゃんと見張らないとなと教訓を据えた。



「亜子ちゃんって彼氏いるの?」


「か…れしぃ?…いませんよぉ、そんなのー」


アルコールで頬を赤くしている亜子が少し小さく答える。
頭の中にぼんやりと浮かんだヨウの顔が消えない。


「じゃ、可愛い亜子ちゃんにちょっとだけイタズラ」


答える間もなく唇に温かみを感じていた。
それが何なのか理解するにはすこし頭が重い、けど目の前に迫った咲斗の顔に、アルコールのせいなのか何なのか分からないままに心拍数を上げていた。