「遅れてごめーんっ!」

待ち合わせだった居酒屋に着くと、すでに皆揃っているようだった。
正直集合時刻五分前としっかり約束は守っているわけだが、とりあえず謝った。


「もー亜子ってば、来ないのかと思ったよ!」

「今、由梨ちゃんと亜子ちゃんが来なかった場合の罰ゲーム考えてたんだよぉー」


会って早々肝が冷える発言をする美咲に、苦笑いを浮かべた。
そんな美咲はいつも以上にキメてきたようで、各言う私もそれなりに女の子らしく身を整えていた。
ふわふわの春ワンピにウエスタンブーツ。耳元にはお気に入りのピアスが揺れている。
別に、何かを特別に意識したわけではないんだけど、やはり女子としてこういう場ではある程度しなきゃいけないこと、というものがあるのである。



「亜子ちゃん、久しぶり。隣いい?」


「えっ?…あ、お久しぶりです…!」


声をかけられて左を向くと、ある程度予想はしてたんだけど佐土先輩の姿。
慌てて少し右に身を寄せ場所を作った。



「今日もかわいいね?」


「そ、そんなことないですよ!そ、そういう佐土先輩が今日もか、…か、かっこいいんですよ!」


「っくく…なんてゆうか…、亜子ちゃんって…」


急に笑い出した先輩はそれ以上言葉にしなかった。
何がおもしろいんだろう…。



「ってゆうか亜子ちゃんひどいよー。俺超メールしてんのに、全然構ってくんないんだもん」


「あー、いや、なんてゆうかそれはそのぉー…悪気はなくって、えーとぉ…」



唇を突き出して拗ね始める先輩に別の顔が重なった。

先輩からのメールは基本的にヨウが嗅ぎつけては返信する間もなく携帯を取り上げられてしまっていた。

不可抗力だし…私は悪くないし…と心の中で文句を言うも、周りの喧騒にかき消されていった。