ほっと一息ついたのは言うまでも無い。
サブディスプレイに表示されたメールの相手を確認すると、佐土咲斗の名前に何故だかヨウの方をチラッと見てしまった。
ずっと私のことを見ていたのか、一瞬合った目に不思議そうな顔をしていた。
なんだか気まずくて背を向けて開いた携帯に気を取られていると、ふっと背中に気配を感じて首を捻った。
「そのメール…佐土咲斗って男だよね?」
「そ、そうだけど…」
内容に目を向けているヨウから隠すように胸にぎゅっと携帯を押し当てた。
「…ムカつく」
ぷうっと頬が膨らんでいく様子が目に取れて少し吹き出してしまった。
そんな私を一瞥し、益々機嫌が悪くなっていくようである。
かっこいい顔してるのにまるで中身は小学生だ。背は180センチくらいだろうか?なのにまるで中身は…。
「なに一人で笑ってんの?全然おもしろくないんですけど!!」
「ぷっ。だ、だって…なんかかわいくて…ふふふ」
煽るだけだと堪えようとする笑いは、そうしようとすればするほどに表に出てしまった。
「かわいいって何!?も、もしかして…俺のこと男として見てないの…?」
どんどん曇っていく顔には今にも涙がこぼれおちてきそう。
男とか女とかの前に、まず猫から人間への変化にこっちは精一杯だっていうのに全く。
「クロのことは…、ヨウのことは、今まで通り大好きだから」
そういうと、じゃあさっきの男とは金輪際関わるな!とまた無理なことを吐き出す黒猫に、ぱちっとでこピンを食らわした。