でもきっと、この瞳を私は知ってる。
暗い中でも一際存在を放つ漆黒に、長い間見詰め合っていると吸い込まれてしまいそうだった。


「とりあえず…中、入って」


ふとあたりを見回してここは立ち話をするのには適してない場所だと思い返した亜子は、部屋に入れることに決めた。

ドアを開けて中に入ると、朝のことがフラッシュバックする。


いささかこちらの雰囲気が変わったことにほっとしたような表情を浮かべたヨウは、私の後ろに大人しくついて来た。
トイレとお風呂を通過してドアを開けると南向きの9帖の部屋。
左手前はキッチンで、真ん中に白のテーブルとソファ。左手奥には実家から持ってきたお気に入りの茶のローチェストに、右手奥にベッド。

しばらくの間何を話すでもなくお互い立ったまま向き合ってた。
先に口を開いたのは亜子。


「えっと…。何ていうかその…。私の中で、もしかしたらって思ってることあるんだけど、でもそれは…ありえそうにもないっていうか…その……」


「思ったままを話してよ。これは亜子が心から信じてくれなきゃ、認めてくれなくちゃどうにもなんないんだ」



あまりにも真剣な瞳から目が逸らせなくなる。
亜子は少しずつ、非現実的なことだとは分かっているけど正直に言葉を口にした。