甘い果実




お疲れ様です、と声をかけてバイト先の居酒屋を後にした。



(なんか今日は疲れたなぁ。)


おそらく原因は朝の一件であることは分かってるけど。
本当に、私の知り合いじゃないよねぇ…?


今日は雲がかかって月は見えない。
街灯をたよりに黙々と考えながら歩いた。


そういえばクロはどこいったんだろ。
今日もマンションの前いたりしないかな?


そんなことを考えていると、今日はマンションの前に人影。


「亜子!!!!!」



ふと目が合ったような気がしたらいきなり叫ばれたものだから、びくついた。
逆行で顔がよく見えないけどおそらくこの声は…。


「おかえり、亜子。」


「な、何、またあなた…。もしかして、ストーカー…!?」



大声を上げてしまいそうになった私の口をぱっと塞いで、落ち着いて!と必死に頼まれて、上げていた手を下ろした。