私はと言えば、次から次へと
理解出来ない言葉ばかりで頭が混乱してきた。



「はぁー疲れたぁ。………あー、っと、ごめんね」



言いながら振り返り、視線を私の後方へとさまよわせるとすぐ戻してきて。



「高梨さん」



ああ、表札を見てたのか。



「あれ? 大丈夫?
何か―――」



その後に続く言葉は永遠に
分からない。


だって、近付き、顔を覗き込んでこようとしたから思わず。


本能が、危険だと判断した男を突き飛ばし、
驚いている間に玄関のドアを開け中に飛び込んだ。


鍵を閉めチェーンまでして。


―――危険だ。


あの男は危険な気がする。


それだけは十分
分かった。


顔を合わせる事なんて滅多に
ないからそう気に留める事もないだろうけれど。




だけどその思いは意外と早く
打ち砕かれる事になるのだ。