(彰SIDE)



八つ当たりに似た思いを海にぶちまけながら引きずられるように教室に戻った。



いつかの休日に出かけた女子に声を掛けられたが、何を言われたのかも分からずにそのまま席についた。






「なあ、彰ちゃん?」


「誰だ、彰ちゃんって。」



海のふざけた呼びかけにしっかり突っ込みながらも、次の言葉を待つ。



「もしな、もし、紫音ちゃんのことを一度も幸せに笑わせたことがないなら、考えた方がいいと思う。」


「は?」


「いや、俺、お前のこと批判するつもりはねえんだよ。」


「…ん。」


「ただ、好き同士でいるのに、いたのに、幸せじゃないって、意味がないと思うんだよ。」





海はいつも恋愛に対して”頭にお花”みたいな奴だ。

今の言葉通り、こいつは幸せとか気持ちとか、やけにこだわる。













海の言葉を馬鹿げていると思い始めたのは、いつからだったのだろうか。






ちゃんと、気持ちはあったはずなのに。



あいつへの気持ちが埋もれていったのは、いつからだったのだろう。











なあ、紫音。

お前は、俺の前で、幸せそうに笑っていたことがあったっけ?






_