差別

　悠太は彼女達の会話が気になり、自分の机を教室に持って行った後、すぐに徐さんのところへ向かった。コンクリートの中廊下から、徐さんがブランコに座ってゆっくり揺れているのが見えた。熊坂先生は、自分にした事を彼女にもしているので、悠太は少しでも元気付けたいと思った。
　徐さんのそばに行くと、彼女は浅黒い肌に木綿の質素な服とはスカ－トの姿で、髪は三つ編みにして、けっして裕福とはいえない身なりが悠太には親近感を覚えた。
「ねぇ、どうしたの？先生に何か言われたの？」
「うん、あんた、だぁれ・・・」
徐さんは悠太に声をかけられた事に、少し戸惑いのような仕草をして悠太に返事をしたが、なにか疲れたような表情だった。
「僕は秋月って言うんだ。酷い事を言われたの？」
「うち、在日やから、もう来るなって・・・」
「熊坂先生が、君にいったの？」
　悠太は彼女が言った、「在日」の意味が判るはずも無く何を言っているのか、まったく判らない話だったが、熊坂先生が徐さんに学校にくるなと言った事はわかった。
「あんたがアキヅキ！皆が言っていたわ。身無五って、あんたなの・・・」
「先生に言われた事を父ちゃんに言ったら、また叩かれるかなぁ。」