差別

　悠太と熊坂先生は、教室の前と後に離れていて、奥を歩いている悠太に怒鳴りつけて呼んでいる。熊坂先生は豹変していた、子供達がいないのをいい事に、鬼のような釣り上がった目で、悠太を睨めつけて怒鳴り散らした。
「今日はもう暗くなったから帰っていいわ！」
「許すわけじゃないのよ！判った！」
「判った！この身無五！非嫡出子は、本当は此処（学校）に来ちゃ駄目なのよ！！」
　悠太には判らなかった、熊坂先生の言った事を理解できなかった。子供に理解できない事を、熊坂先生は７歳の悠太に向かって怒鳴っていた。
　悠太は黙ったまま自分の荷物を持って教室の扉に向かった。悠太は扉の前で立ち止まると、くるりと身体の向きを変えて熊坂先生に言った。
「せんせい、さようなら。」
　悠太の声には、元気がなかった。母さんがもう一人いることを、悠太も薄々は感じていたが、家族の者が何も言わないので、そのままにしていたのだ。しかし他人の口は塞げない、熊坂先生が初めてではなかったのだが、こんなに蔑視された事は今までにはなかった。
　７歳の新一年生の秋月悠太は、まだそんな事は理解できない子供だったのだ。

　悠太は学校に行っても、目立たないようにしていた。悠太の性格は静かでおとなしい、生まれてから猫や犬と過ごす事が多かったせいか、一人で遊ぶ子供だったので人見知りは激しかったが、家には、猫・犬・山羊・ニワトリ・ウサギ・牛が飼育されており、その他にも野生の動物達が家の周りにいるので、友達は動物たちで間に合っていた。
　悠太には姉兄が二人いて、父母と合わせて５人家族だが、他にも祖父祖母と父の妹弟の３人に、父の姉家族３人も同居していたので総勢１３名の大家族もいる。そのの中で育っていた悠太には、寂しい思いなどはした事など無く、多くの愛情に育まれていた。