徐さんはまだ7歳の小さな女の子なのに、自分の身に起こった事を理解していた、そして次に起こる事に不安なようでもあった。
「雪が降ってきたね、寒いから教室に戻ろう。」
 悠太が教室に帰ろうと言うと、徐さんは黙ったまま悠太に背中を向けて校庭を出て行った。悠太も彼女の後ろ姿を見送って、自分も教室に戻るのが嫌になって校庭を出て行った。
 灰色の空から綿雪が降る、後ろ方から熊坂先生が大声で、二人を呼び戻そうとしていた。
「あなた達、何をしてるの!勝手な行動は許しませんよ!」

 次の日は2学期の終業日で、新しい教室に行くとザワザワと皆が騒いでいる、悠太は新しい教室になったからだと思ったが、実はそうではない。悠太が昨日持って来た机を探すと、もうそこには別の男の子が座っていたのだ。
「アレ―、ここは僕の席じゃなかった?」
「君の席は、この教室には無いよ、ホラここに数字が張ってあるだろう。」
その席に座っていたのは、栗田君だった。彼は机の端に貼り付けてある、トランプほどの紙を指差して悠太に言った。そこには悠太の出席番号の26番ではなく、栗田君の9番の数字があって、悠太の机はどこかほかの所にあるらしい。
「じゃぁ、僕の机は、どこにあるんだ!」
 悠太が自分の机を探していると、栗田君と坂口君が机の在りかを教えてくれた。
「アキヅキッ!」
「君の机は先生が外に出していたぞ!」
 悠太はその坂口君の声に、一瞬わが身の耳を疑った、熊坂先生が自分に対する嫌がらせが、また始まったのかと思った。昨日「徐 美姫」と話していたとき、ヒステリックな甲高い声で叫んでいた熊坂先生を思い出していた。