「いや、私姫君じゃないし。
なんか…馬が暴れてるみたいだったので…。」


雪乃の言葉に
男は頭を掻いた

「は、はぁ。

それが、この馬は脚は早く力も強いし
クリス様の愛馬候補にって…
馬屋から引きあげたのですが…

このように
気性は荒く、人を乗せるような状態ではないので
調教し直そうかと…。」


雪乃は
そっと栗毛の馬に近づく


馬は前足をあげて威嚇したが
雪乃は気にすることなく

じっ…と馬の瞳を見つめた


「急に知らないところに連れてこられて
色々つけられて
…怖かったんだね…。」


優しく話しながら
顔をなでる

「大丈夫。怖がらなくていいよ。
何もひどい事はしない。

大丈夫だよ。」


すると
馬は驚くほど静かになり

まるで
雪乃に甘えるように
頬に顔をすりよせた