雪乃は自室の長椅子に座り
次第に暗くなる夜空を見上げていた


なんで
私の事なのに…秘密にされなきゃいけないの?


それとも
なんかまずい事でも書いてあったとか?


アメリア様…

人形みたいな完璧な女のひと
歳は私より年下かな?

でも
きっと身分の高い人なんだろうな


クリス様とも普通に話してたし…

なんとも言えない
居心地の悪い気持ちで
雪乃はクッションを掻き抱いた


「…まだ機嫌は治らぬか?」


その時
部屋に響いたバリトンの声


雪乃は
声の主に顔を向けることはせず
じっと外を見つめていた


「無視とは…ずいぶんと嫌われたようだな。」

クスクスと笑いながら
その声はゆっくり近づいてくる

そしてついに
雪乃のすぐ後ろまで迫った


「あんな風に強引に隠して
すまなかったと思っている。
手紙の事を話そう。

だから
こちらを向いてくれないか?」


その優しくて
諭す様な声に雪乃の胸が静かに音を立てる


そして
ついに耐えかねて

雪乃はおずおずとクリスの方に
向きを変えた