執務室ではクリスが既に
椅子に座っていた


君主の微妙な表情の変化に
有能な家臣はすぐに気付いた


「何かありましたか?」


「アレの機嫌を損ねた。」

ジャンの言葉に
クリスは驚く様子もなく
しぶしぶ答える


「あんな風に
強引に連れ去るからですよ。」

ため息も盛大に付け加えた
ジャンの姿に
クリスはフンッと鼻を鳴らした


「しかたあるまい。
アレは弱く…そして脆い。

それなのに
今まで一人で生きてきたかのように
強がり、本音を隠そうとする…。

そんな姿をみていると…
どうしても過保護になってしまう。」


「それでは
ユキノ様は成長されませんよ?

クリス様の正妃となるなら
後宮の姫や権力争いの猛者たちを
掌握出来なければなりません。」


「わかっている。
あぁ、
この話はもう良い。

本題に入ろう。」 



クリスがうまく逃げたようにも
見えたが

ジャンは
気を取り直して


先ほどの手紙を
再び
クリスのデスクに広げた