「ユキノ…?!」


ビクッ!!


急に響いた
聞き覚えのあるバリトンの声に

雪乃は肩を震わせた


「…どうした?
歌劇は終わったのか?」


ゆっくりと近づいてくる声


ヤバい
クリス様にこんなところ見せたくない


また
心配させてしまう


雪乃は
急いで涙をぬぐおうとしたが


その手は

伸びてきた大きな手によって

遮られた



「なぜ…
一人で泣いている?」


言葉と同時に

大きな胸に引き寄せられ
優しく抱きしめられる


「一人で泣くな。

泣きたくなったら
私のところに来なさい。

いつでもこうして
抱きしめて温めよう。」



その言葉に
雪乃はそっと
クリスの胸に頬をすりよせた