部屋を抜け出した雪乃は
宮殿内の人手の薄さに驚いた

侍女が数人いるだけで
兵士は門の見張りなど
必要最低限しか残っていない


誰にも見つかることなく
雪乃は宮殿の裏手までたどり着く事が出来た


そこは浴場として使われている場所で
大理石の大きなプールには
溢れんばかりに水がはられている


その時
誰かの気配を感じて
雪乃は物陰に隠れた


目を凝らすと
プールの真ん中に人の姿が見える


艶のある長い黒髪
飴色の肌
健康骨辺りから生える漆黒の翼


ブレイク…
あまりに妖艶な光景に
見とれそうになったが

次の瞬間
雪乃はその姿に息をのんだ


翼で見えなかったが
大きく広げたその翼の下
肩甲骨から腰にかけて
大きな傷後があった

鋭利なもので切り付けられたような
痛々しいのものだったが

良く見ると
無数の傷や火傷のあとの様なものが見えた


それらはあまりにも酷く
雪乃は耐えきれす目をそらす


そして
静かにその場から離れた