「男がそんなに束縛するのは
見苦しいですよ?」


鳥の鳴くように美しい声に
2人は振り返る


そこには深いパールのドレスに身を包んだ
皇后が立っていた


「皇后陛下…。
そのお言葉は心外にございます。」


「なにが心外ですか。
このような公の場で唯一の寵妃を出し惜しみなど…
己の器が問われますよ?」


クリスに言く似た顔の皇后が
鋭く言い放つと

流石に
クリスもいつもの勢いはなく
しぶしぶといった様子で
雪乃を開放した


やっと解放された雪乃は
ほっ…と息を吐く


「息苦しい息子でごめんなさいね。」

クリスとは対照的に
優しく微笑む皇后は

ユキノの肩に手を置いた

「誘拐のこと聞きました。
怖い思いをしましたね…。」

「い、いえ…」


「何かあればすぐ城へ来なさい。
私はいつでもユキノの味方ですよ。」

その言葉に
雪乃の胸が
また…じんわりと温かくなった

クリス様が言っていた事と同じだ

皇后陛下のお気持ちが伝わってくる…

深い藍色の瞳に浮かぶ慈愛の心

雪乃はその思いをしっかりと受け止めた


「はい。
ありがとうございます。」


そして
力つよく返事をすると


皇后は嬉しそうに目を細めた