荷物をすべてまとめ、
アパートに名残惜しさを感じつつ、
彼の家…私の新しい家に向かった。
そのまま入っていいのか、否か…。
いや、やっぱりインターホン押そう。
仮にも他人の家だし、
勝手に入るのはなんだか不法侵入をしているような気分になるだろう。
そう思って、
私はインターホンを押した。
しばらくすると、彼のお母さんが出てきた。
「はいはーい…って、あら!小町ちゃんじゃない!もーう、勝手に入ってくれてよかったのにー。今日からここはあなたの家でもあるのよ?」
彼のお母さんは、何気なく言ったのかもしれない。
でも、私にはとても素敵で大切な言葉だった。
嬉しくて涙が出そうになったのを必死に我慢して、彼のお母さんの後を追った。
「千草ー、あなたー!小町ちゃんが来たわよー!」
お母さんはそう言って、
先にリビングに入って行った。
どうやらリビングにご家族全員が揃っているようだ。