コンコン。

資料を読んでいたオレの部屋をノックし、母が入ってきた。

「翔、今いい?」

「いいよ。」

オレは資料を置いて母を見る。

「ねえ、恋した?」

突然の問いに驚いて声が出ない。

「そんなこと関係無いだろ。」

二宮華菜が頭をよぎったそう言った。

「ふ〜ん。」

意味ありげにオレを見る視線に耐えかね、母を追い出す事にした。

「そんな話しなら出て行ってくれ。」

「翔、失恋って誰もがするのよ。」

その言葉にこの前の失恋を思い出す。

と同時に母がその事を知っている事に驚く。

「あんたは昔から失敗すると極端にそれを避けるから。・・・両思いになれる恋しかしないなんて考えないでね。失恋してもそれは無駄じゃないのよ。・・・言いたかったのはそれだけ。じゃあ、その資料よろしくね。」

言うだけ言うと母はさっさと出ていった。


どうやら母には、オレの事は筒抜けなのかもしれない。