「あ、そうそう翔の部屋に資料を置いたから、ちょっとまとめといて。」

忘れてたというように母が声をかけた。

「資料って？」

「今年度の予算書。私的にはちょっと無理があると思うんだけど。翔の意見も聞きたいから。よろしくね。」

そう言ってにっこり笑った。

「・・・解った。」

そう言ってリビングを出て自分の部屋に向かう。

両親は従業員１万人を超える会社の経営者だ。

父は職人気質で今だ現場での作業を好む。

そんな父に代わって実質会社を動かしているのが母だ。

可愛らしい容姿とは反対に冷徹な経営者の側面を持つ。

「父さんと同じ仕事がしたい。」

そう言ったオレに
「私、世襲って嫌いなの。無能な経営者の元で働く従業員が悲劇よ。同じ仕事がしたかったら努力しなさい。」

その言葉と共に母はオレに少しずつ会社の仕事をさせるようになった。

オレ自身、会社の仕事は面白い。

部屋に入ると資料が目に入る。

それを手に取ると資料を読みはじめた。