部屋の前に立つと、余計ボロに見える。


ドアの塗装は所々剥げていて錆び付いた鉄板が剥き出しになっているし、ドアノブは回りそうにない。


友達の話しじゃ大家さんは美人らしいけど、建物がコレだ。その情報も危うい。




「はぁ〜あ…。」




気がついたら、大きなため息をついていた。




「ダメじゃない!!幸せが逃げるよ!!」




明るい声と共に、背中をポン、と叩かれた。


振り返ると、綺麗な女の人が立っている。


いきなり後ろに立っているもんだから、思わず後ずさってドアに張り付いた。




「ちょっと、そんなに驚かなくても…。私はお化けじゃないわよ？」




苦笑する女の人。




「あ…貴女は？」


「私？私は…錦戸 綾華』です。」




僕が聞くと、彼女は言った。




「錦戸…さん…？あ、僕は…」


「あ、待って!!私が当てる。貴方は…浅川渚唄くんね!!」




え…なんで知ってるの？