「・・・っなんで!!何もしてこないんだ!!」
__殺される
そう思えば身体が反応するはず。
今までもそうだったはずだ。
俺の言葉にディスは哀しそうに笑うだけ。
それが、俺をきつく縛りつける。
「・・・・前・・殺す・・・な・・・だ。」
何か呟いた言葉が俺にはぼんやりとしか聞こえなかった。
その次の瞬間、
ディスが地を強く鋭く蹴った。
風と共に俺に剣をつきだす。
それを間一髪で避けるとそのまま足をディスの腹に入れる。
それをディスは避け、俺を正面から“斬ろう”と剣を振り上げた瞬間、
腹に隙ができ、俺は無我夢中で剣を振り抜いた。
「・・・・っ・・!!!」
小さな呻き声と崩れ落ちる音が背後に聞こえる。
その音を最後に自分の息遣いしか聞こえなくなる。
「・っはぁ・・・・っぁ・・・」
反射的に振り抜いた皐月がディスの腹を深く抉っていた。
真っ赤な血が皐月から滴り落ちる。
皐月は血を受けて、妖しく光る。
表情があるなら、そう嬉しそうに。
「・・・そ・・・ら・・」
背後で小さく俺を呼ぶ声が聞こえる。
最後の情け。だと思い振り返る。
俺を見てディスは微笑んだ。
「・・・お・・ま・・・に王・・が・・・」
脂汗を額にかきながら必死に俺に何かを言おうと口を動かす。
「・・・い・・きて・・・ま・もれ・・・と・・・」
ギュッと俺の服の裾を赤に染まった指が掴む。
赤に染まる服が何かを示していて、
「・・愛・・・して・・・い・・・る・・・と・・」
俺は大きく眼を見開いた。驚きが体中を駆け巡るよう。
そして、そんな俺を見てディスから力が抜けた。
俺の服を掴んでいた手がスルスルと地に落ちる。


