幸せの音が響く

『高村ッ――』


前に高村の姿を見付け、名前を呼んだ。

俺の声にハッとし、立ち止まっていた体を再び動かした。



『待って!!ちょっと待って――』


高村の腕を掴み足を止めた。


『ごめんッ!!あの・・』

「なに?どうしたの?私教室に用が・・」


俺の方を見ず、話した。

その後ろ姿がますます俺の心を締め付け、掴んでいた高村の腕をそっと放した。 


『っつ・・さっき俺が言ったことだけど――』

「大丈夫だよ。冗談でしょ?分かってるから」

『違う!!冗談じゃないッ!!冗談じゃないんだ・・』

「えっ?な、何言って・・」


俺は、背を向けたままの高村に言った。



『俺が好きなのは高村なんだ。
高村が好きなんだよ』

「・・・・・」

『本当だよ。ウソでも冗談でも何でもない・・!!ずっと高村を見てたんだ』

「で、でもさっき・・」

『さっきは・・いきなりあんな事言ったら引かれるんじゃないかと思って、とっさについたウソで――
でも、それで高村がどんな気持ちになるとか考えてなくて・・自分のことしか考えてなくて・・。
本当ごめんッ!!!!
俺、南から聞いてたのに・・・。高村が男が苦手なことも、告白で嫌なことがあったことも・・。聞いてたんだ。
なのに、冗談とか言って、本当ごめんッ。
今更遅いかもしれないけど、本当に高村が好きなんだ。ずっとずっと好きだったんだ』







まるで言い訳だ。

自分でもそう思うけど、高村にこのまま誤解されたくない。


男が信じれない高村に冗談だって言ってしまった俺の言葉を信じてくれって言っても無理かもしれないけど―――



でも・・でもせめて、俺が高村を好きだってことは知っていてほしい。



嘘なんかじゃない。














俺は高村が好きなんだ。