レニオは他の席の方に視線をやった。


「他に席、空いているんだけどね?」


 女性はニッコリしながら言う。


「アナタとお話ししたいの? 1人なのでしょう?」


 不審な思いで、ジッと女性を見つめるレニオ。


 ダメだよって断ろうとしたけれど…


 女性はサッサと座ってしまった。


 何者だ、この女?


 何かの勧誘か?


 それともセールス?


 そんな思いが込み上げてしまう。


 なんせレニオは…


 社会人なりたての頃、セールスまがいの詐欺で悲惨な目に遭っているから…


 親しい女性以外は、警戒感を抱いているのだ。


「誰なんだ、アンタ?」


「安心なさい。決して、怪しい者じゃないから」


「十分、怪しい」と、レニオは迷惑そうな表情を見せる。


 しょうがないわネェ。


 女性は苦笑いしながら、名刺を差し出した。


「これで、私が怪しい女で無いって事を信じてくれるかしら?」