【短編】ヘタレ君のわがままなカノジョ。





「俺もヒカリちゃんを独り占めしたいと思うし、俺はヒカリちゃんのだよ。」




「ハル…っ?」





そして、俺の名を呼ぶ君の声を遮り、優しく唇を重ねました。





「俺も、ヒカリちゃんが大好きだよ。」




そっと唇を離し、ヒカリちゃんに微笑みます。




今が黄昏時(タソガレドキ)でよかったです。




きっと、俺の顔がひどいくらいに真っ赤なのはバレなかったでしょう。





このシチュエーションで真っ赤っかなんて、カッコ悪いにもほどがありますよ。





でもきっと、緊張して手が震えたのはバレたでしょうね。





と、自分の不甲斐なさに苦笑します。






「…じゃあ、帰っていいよ。」




ゴシゴシと涙をぬぐって、君はぽつりと言いました。




さっきの素直な君は、どこに行ったのでしょう。



また苦笑いを浮かべた俺は、大人しく帰ることにしました。





「またね。」




「うん、また明日。」





「お弁当、楽しみにしててね。」





いつまでも手を降る君を背中に感じながら



静かな夕闇の中、駅までの道を歩みました。