【短編】ヘタレ君のわがままなカノジョ。





数十分歩いた所に、そのスーパーはあります。



ちょうど今晩のおかずを買いに来た奥さん方がたくさん来ていました。




「…けっこう人いるね。迷子に気を付けてね。」



「ハルじゃあるまいし、この年で迷子になるわけないよ。」



君はそう言いつつ、俺の左手をきゅっと握りました。



でも、ちょっと控えめに薬指と小指だけです。




でも、そうすると右手でかごを持つことになり、商品を取れません。



どうしましょうか…。




俺が考えあぐねていると、君は赤い顔をして俺を見上げました。



「何を買うの?」




「あ、えっと、まずジャガイモ。」



俺がそう答えると、君が空いた左手でジャガイモが入った袋を持ち上げました。



「はい、ジャガイモ。」



「あ、ありがとう…。」




これは、予想外の展開です。


俺がお礼を言うと、君は俺が右手で持っているかごにジャガイモを入れました。



「次は?」



「に、ニンジン…。」




また君は、ニンジンの袋を持ち上げてかごに入れました。