それはもう突然。

一瞬のうちに。

海斗はいなくなった。

「おやすみー」

そう言ってカーテンを閉めたのが最後。

急にバタバタとカーテンの外で足音が聞こえて目が覚める。

また眠くなって、うとうとして、朝起きたら海斗はいなくなっていた。

ガランとした海斗のベッド。

真っ白な新しいシーツがかけられて、朝日を浴びていた。


「ねぇ、海斗は?」

朝の検温にきた看護師さんに聞く。

「え?あぁ…海斗くん、退院したのよ」

それ以上聞けなかった。

だって、

オレは子供で何も知らなくても、なんとなく予想がついたから。

オレ以上に冷静なのは柚希ちゃんだった。

「海斗、死んじゃったんだって」

軽く言うその口調にびっくりした。

それに、知りたくなかった事実。

「私も海斗と同じ病気なの。いつ死ぬかわかんない。『ふせいみゃく』で死ぬかもしれないし、息ができなくなって死ぬかもしれないの。それに一生治らないんだって先生が言ってた。」

なんでそんな平気でいられるの?

オレだったら普通じゃいられないと思う。

弱そうに見えるのに淡々と話す柚希ちゃんが信じられない。

「…ほんとに治らないの?」

「たぶん」

ついさっき先生から明日退院していいって聞いて嬉しかったはずなのに、今はなんでこんなに悲しいんだろう?

柚希ちゃん、悲しくないの?



ハッとした。

淡々と話す柚希ちゃんだけど、目には涙をいっぱい溜めていることに気付いたから。