【side 律】

どういうわけだか昔からよく苦しくなることがあって、それが「ぜんそく」ってことを知ったのは小学校3年の秋。

夜明け前、いつものように発作が起きて、気がついたら病院にいて「入院です」って。

それが、人生で初めての入院。

かなり楽しみにしてた運動会当日の悲劇だ。

それに、学校休むことで『病弱なヤツ』って思われるのが嫌だったし、すげー落ち込む。


「おかーさん。オレいつ帰れんの??」

「うーん…先生に聞いてみなくっちゃねぇ…」

「今きいてきてよー。もう元気だしっ!!」

「でもホラ、律。点滴もマスクもつけたまま帰れないでしょ?」

「元気なったし、もういいじゃん!なぁー」


気だけは元気で、退屈して、ワガママ言って困らせて。

じっとしてられないから談話室でうろうろ。

そんなときに出会ったのが、同じ小児病棟に入院する柚希だった。


男ばっかりの4人部屋。

その同じ病室に入院中の海斗はオレと同い年。

心臓が悪いらしい。

入院慣れしてる海斗は色々と裏事情を知っているらしく、かなり面白い話をしてくれる。

それに何かと気が合うからすぐに仲良くなった。

夜消灯時間を過ぎてからコソコソ話す。


「オレさぁ、好きなやついるんだ」


海斗の突然の告白。


「まじでっ?!」

「律は好きな子いないの?」

「…あんまり考えたことないなー。カワイイなって思うけど好きとか、わかんねーもん」


急に海斗がオトナに見えた。

で、すげー気になる。


「だれ??」

「知りたいか?」

「知りたい!」

「ゆずきちゃん」

「ゆずきちゃん?」