「じゃあ、
 お父さんとお母さんはここで。
 行ってきますねー」


自動ドアの前。


「柚希、がんばってね…」


もう涙目のママ。


「絶対大丈夫だから。
 待ってるからな」


精一杯の笑顔のパパ。

こっちまで
泣きそうになるじゃん…。



「おはようございまーす。
 担当します看護師の宮本です。
 お名前確認させてください」


手術室に入ると
たくさんのスタッフさん。


「明日葉 柚希です」

「はい、ありがとうございます。
 じゃあこっちの台に
 移ってもらえるかな?」


自分で上がる手術台ほど
怖いものはないな…。

もう、あとは、
先生と神様に任せるしかない。


「柚希ちゃん、そしたら…」

「佐伯さんっ!」


思わず呼びとめた。

強がりの私でも、限界。


「うん?」

「麻酔効くまで、
 そばにいてほしいの。
 …だめかな?」


我ながら子供だなって思うけど、
ホントは誰かに頼りたくて。

たぶん、
小学生の頃からの付き合いの
佐伯さんにはバレてると思う。


「わかった。ここにいるからね」