部屋で律から説明された
私の両親は
手術に反対だった。


「柚希は大学病院の
 実験台じゃないのよ!?

 生きてほしいけど…
 そうじゃないでしょう??」


ママが律に向かって
非難を浴びせるのを見て、
すごく胸が痛んだ。

だって…
律は私のことを思って
言ってくれたんだから。

みんなが
私のことを思ってくれる。

それだけでも
幸せなことだよね。


「もう…もう柚希には
 痛い思いさせたくないのよ…

 まだ頑張らなきゃならないの?

 この子の口癖、
 律くん知ってるでしょ?

 “大丈夫”“頑張る”って…」


涙ながらに言うママ。


「私が…ちゃんと健康な体で
 産んであげられなかったから…」

「それは、違うよ?」


自分を責めるママなんて
見たくないから。

だって、こうなったのは
誰のせいでもないんだから。


「私はママが思うほど
 かわいそうじゃないし、
 全部運命だって思ってる。

 ママの子に生まれたことも、
 律に出会えたことも。

 すごく幸せだから、ね?」


病気じゃなかったら、
こんなにも家族の強さを
感じられなかったかも。

病気じゃなかったら、
全力で私を愛してくれる
律に出会えてなかったかも。

人生は
良いことと悪いことが
±0になってるって
誰かが言ってた。

その通りだよね。