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世界初。

そう言っていた。

普通、
世界初!っていうと
すごくイイことだし、
みんなに歓迎される。

だけど、

この話は訳が違う。


「すでにバチスタを受けた
 柚希ちゃんの心臓は、
 この手術に耐えられるか
 わからないのが正直なところ。

 それに、
 先天性の症例は世界初だ。

 受けるか受けないかは
 ちゃんと自分で考えてほしい」


吉岡先生、田原先生、
そして律の同席のもと、
手術の説明がされた。

本当は手術の内容なんて
難しくてよくわからない。

ただ、わかったのは…

アメリカで行われた
この手術は好成績を挙げている。

ただし、
私のような生まれつきの症例は
今まで行われていない。

そして、
心臓の機能が悪すぎる私は
もう手遅れかもしれない。

吉岡先生は正直に話してくれた。

もう限界が近づいてるって。

受けない選択をした場合、
苦しまないような
治療をしてくれるって。

最期を迎えるまでに、
したいことをしてもいいよって。


ただし、

手術を受けるなら
今までと同じように
いろいろと制限もあるし、
術後も頑張ってもらうよって。


律は黙ってた。

医者としての立場、
家族としての立場。

その狭間で、
気持ちが揺れてるみたいだった。