「ただいま。
 柚希がんばったね」


そう言って、
変わらない笑顔を見せた。

律が帰ってきた。

ちょうど、
立ってもふらつかなくて、
車いすに乗れた日の午後。


「おかえり!」


律が予想してたよりも
全然元気な私を見て、
少し驚いてくれた。

そして安心してた。


「会いたかったよー」


きゅーって律に抱きつくと、
抱きしめ返してくれる。

律のにおい。

律の体温。

律の鼓動。

たった1週間ほど
会わなかっただけなのに、
全部懐かしい気がする。


「ゆずき…」

「んー」

「痛いってば」

「もうちょっとだけ」

「はいはい」


律に痛いって言われるくらい
力込めて抱きつけるのは、
ちょっと元気になった証拠。

そう信じたい。


「どうだった?
 アメリカの学会」

「話してきたよ。
 澤田先生って人と」

「…そう」

「もう少しだから」

「…うん」


もう少しで
全てが変わる。