あっという間に
律は旅立って行った。


「柚希ちゃん?
 ちょっと座ってみる?」


律が日本を発った日、
少しだけ点滴の数が減った。

ずーっとずーっと
寝たままの生活で、
久しぶりに座った。


「あ…なんか…
 ちょっと気分悪いかも…」


ヘタレな自分が悲しい。

くそぉぅ…

5分も座れないなんて。


「大丈夫。
 ちょっとずつ、
 焦らずいこうね」


看護師さんに言われるけど、
焦らずにはいられないよ。


「あの、もう一回
 座ってみたいんです…」

「えー?
 今日はもうやめとこう?
 血圧下がってるからさぁ」

「でも…律が…
 主人が帰ってくるまでに
 車椅子くらい乗れるように
 なってたいんです…」


今私ができることって
何もなくて。

せめて、
少しだけでも元気になって
日本に帰ってきたときに
驚かせてやりたいって思って。

律の言葉を思い出す。


「必ず助けるから。
 絶対に今すげぇ最新の
 治療法見つけてくるから」


体は辛いけど、
律がそう言ってくれるから
私、頑張れそうな気がする。