そんなとき
声かけてくれたのは
今ついてる救命の指導医。


「胸水穿刺14時からだって。
 道重、その時間抜けていいぞ」


ERにいる時なんて
怒鳴られっぱなしなのに。

現場離れると
途端に人間味ある先生。


「今柚希さんに
 できることって少ないから、
 せめて心の支えだけでもね」

「…気を使っていただいて
 スミマセン…」

「最近の若い医者は忘れがちだけど、
 患者さんの立場に立った考え方も
 できるような医者になってほしい。
 特に道重には」


こういう先生、
信頼できる気がする。

俺たちを怒鳴るのは
患者さんを考えてのこと。

先生は柚希のこと、
ちゃんと考えてくれてる。

それがわかってホッとした。




「あれーん?
 "道重先生"どうしたのー?」


吉岡先生と柚希の部屋に行くと、

今日は比較的調子よくて
能天気な柚希に苦笑いする。


「胸に水たまってるから、
 その水を抜く管入れますね」


柚希は吉岡先生に笑って言う。


「子供のころから慣れてるし、
 何度もしてるから平気ですよ。
 "道重先生"は見学ですかぁ?」

「茶化すなよっ;」


この子…
わかってんのかー?;

吉岡先生はオレを見て言う。


「"道重先生"は
 僕の介助ついてくれるんだよー」


先生も完全に
柚希ペースじゃねぇかっ;


「消毒ちょうだーい」


吉岡先生は処置が早くて有名。

テキパキ。


「麻酔の注射するねー」


柚希の脇腹に刺さった針。

自分の脇腹が痛い気がするっ;

うぉぉ…オレ倒れそう…;