あんまり見てると
柚希は怒るから、
仕方なく問題集に向かう。

公衆衛生の暗記が甘くて
回答が全然進まない。

あー数字弱いなぁ…。

そのとき、
ガタンと音がして
思わずキッチンを見る。

「…なに?どうした?」

柚希はヘラっと笑って

「なんでもないよ!
 もう少し待っててね!」

って言いながら、
何かを隠す仕草。

なんだなんだ~??

「ホント何でもないから!」

そうやって言うから
余計に怪しいんだよ!

焦ってる柚希に近づく。

3歩後ずさりして
指を押さえて苦笑い。

…指、切った!?

「なにやってんだよ~」

幸い傷は小さくて5mmくらい。

じわっと血が滲むのを
圧迫して止血する。

「血サラサラにする薬
 飲んでるんじゃねーの?
 血止まりにくいくせに…」

「ごめんね?なんか
 ジャマしてるみたいで」

絆創膏を指に巻くと
柚希は申し訳なさそうに
オレを見上げた。

そんな顔すんなよ。

絶対に許してしまう。

「邪魔なんて思ってないよ。
 けど、気をつけなよ?」

「うん、ありがと」

絆創膏を巻いた手で
オレの腕に触れた。

柚希に顔を近づける。

目を閉じた柚希の唇に
ゆっくりと口付ける。

こんなにも愛おしい。