今から二十年程前の事だ。人間としてまだ浅かった八代宗夫は当時二十五歳だった。









「何故だ、中村くん。この細胞はまだ復活の余地があった筈だ。何故途中で放棄したりしたんだ。」









学者はこの頃、無名の私立大学の教授として働いていた。









だがある日のことだった。大学の中で一際優秀だった生徒の中村葉子が単純なミスをしてしまったのだ。









「いや、私はついTXWが空気中で堪えられる時間である一分が過ぎて既に死亡しているとばかり思っていて…。」









中村はパソコンの指を止め、謝った。そして一週間後、中村は大学を去った。









どうしてこんな些細な事で大学を辞めるに至ったのだろうか。そこには中村の人一倍のプライドがそうさせたのだ。









八代は中村が去り、その他の生徒達もあとを追うようにして大学を去って行き、一人になった。









「……ふん、私は何も間違った事など言っていない。」