「しいもっと太んなきゃ…」
「やだよ。ちびデブとか」
尋常じゃないくらいドキドキしてる。
というかドキドキの一言じゃ片付けられない。
170センチくらいの皇ちゃんの腕の中は高くて怖かった。
伏せていた目をあげると真っ黒の長めの髪が風に揺れていた。
「後ろ乗って」
「だめだよっ!皇ちゃん風邪じゃん!!」
「もう治った」
「……嘘つき」
治ってないじゃん。
額から汗こぼれてるよ。
顔真っ赤じゃん。
体熱いじゃん。
「ほんとにだめ…日曜日連れていかないよ…」
「それでもいいから送る」
「………なんで?」
「しいは俺の大事な子だから」
また涙が出そうだった。
今はその言葉を聞けただけで充分。
胸は一杯になった。
