川に飛び込んでからもうどれくらい経っただろうか。
日も暮れ始め、金色に輝いていた川は、赤く染まっていた。
冷たい水に手を突っ込む。
秋の肌寒い季節には、ひんやりとした水の冷たさがしみる。
何度もこれを繰り返してきたが、いっこうに髪飾りは見つからない。
「もういいよ!風邪ひいちゃうよっ」
川辺にいた少女が声をかけてきた。
「やめねぇよ!大切なもんなんだろ」
渉も大きな声で言い返す。
その迫力に押されたのか、少女は何も言わなくなった。
しかしほんっとにねぇな。
流されたんじゃねぇだろな。
つい、そんなことを考えてしまう。
自分が何でこんなことをやっているのか、分からなくなってきた。
―――何か、光った気がした。
それを掴んでみる。
水の冷たさとはまた違う感触。
引き上げてみると、それは星屑のようだった。
3センチくらいの小さなやつで、表面に宝石がちりばめられている。
赤いの、青いの、黄色いの。
名前はわからないが、どれも美しいのだけは分かった。
親指くらいの透明なのが、特に綺麗だった。
「見つかったぞ!」
叫んで、髪飾りを掲げて見せる。
少女の諦めかけてた暗い表情が、ぱぁっと明るくなった。
川辺に戻ると、少女に髪飾りを渡す。
「ほら」
「ありがとう!」
見つめられて、満面の笑みで微笑まれると、少し恥ずかしい。
渉は照れた顔を隠すように視線を逸らした。
「ねえ、名前聞いてなかった」
ふいにそんなことを聞いてくる。
「渉。八嶋渉」
顔を背けたまま、渉は呟く。
渉、と少女が繰り返して言う。覚えようと必死だ。
「あんたは?」
「え?」
「俺名乗ったんだから、あんたの名前くらい教えてよ」
渉が言うと、少女はニコッと微笑んで言った。
「真央。神楽坂真央。よろしくね、渉くん」
真央。
そう、これが俺と真央の出会いだった。
