「なんだ、いねぇのか」



渉はそう小さく呟くと、踵を返して屋上を後にしようとした。



「待てよ」



案の定、といったところか。


4、5人の奴らの内の一人が渉を呼び止める。


渉は仕方なしに立ち止まって振り向いた。




「何か?」


「神楽坂に何の用だ?」



がたいのいい、大柄な男だ。


名前くらい知っている。


伊達和夫。


神楽坂に次いで有名な男だ。




「用なんてないよ。ただ会いたくなっただけ」




適当に理由をつけて帰ろうとする。



伊達たちは納得してないようだったが、渉は気にせず屋上を立ち去った。



けれど、内心焦ってたんだ。



早く神楽坂に会わないと。



真央を助けないと、って。