真央が襲われそうになったあの事件から一夜明け、渉は久々に学校へと向かった。


理由はただ一つ。


真央の兄に会うため。



「なあ、やめといたほうがよくね?」



秀二がついてきながら弱々しくそう言う。


いつもは強気な秀二でも、真央の兄ともなれば腰がひけるのも納得がいくが。



それでも渉は行くと決めていた。



真央を守るために。



「お前ここで待ってて。すぐ戻るから」



情けない顔した秀二の頭に手を置き、渉は校舎へと入っていった。


居る場所は大体検討はつく。


噂で屋上に居ると聞いたことがあった。



屋上への階段を上がる。ゆっくりと、しかししっかりした足取りで上っていく。



重い扉を勢いよく開けた。



「神楽坂紫苑、いるか?」



開けた途端、渉は言った。屋上には四、五人の生徒が溜まっていた。


その中から、神楽坂紫苑を探そうと一歩踏み出した。



「なんだ、お前」


「何しにきやがった」


「神楽坂紫苑だ?」



口々にそう言う生徒たち。その間にも、渉はくまなく神楽坂を探した。



しかし、神楽坂はいなかった。