それから、いつの日か話したみたいに二人は沢山話していた。
渉の子供の頃の話、秀二の話、学校の話。
渉はこれ以上ないくらい話した。
それを真央は笑ったり驚いたり感心しながら相槌を打っていた。
「楽しい。本当に楽しい」
真央が楽しげに微笑んだ。
それを見て、渉もつられて微笑む。
と、渉の携帯が鳴った。
「悪い、ちょっと待ってて」
店内に他の客が居たので、外に出た。
「もしもし」
「よお。俺だ、ケンだ」
ケンか。
ケンは秀二とともにつるんでいる一人だ。
「どした?」
「ちょっと今出れねー?金貸してほしいんだ」
「またかよ。いくら?」
「1万くらい」
1万。
渉は財布を見てみる。
一応1万は入っていた。
ケンは借りた金は必ず返すので、渉も信じていた。
「んじゃ、ちょっと待ってて」
携帯を切り、喫茶店の中に入る。
真央の居る席につくと、渉は謝る仕草をした。
「ごめん。ちょっと急用できた。今日はもういい?」
真央は少し俯いた後、顔を上げて笑って言った。
「いいよ。今日楽しかったし。また来ようね」
真央とは途中まで一緒に帰って橋を渡ったところで別れた。
渉はケンとの待ち合わせ場所に向かった。
